市場環境

2021年現在、住宅関連業界では新型コロナウイルス感染拡大の収束時期が見通せず、依然として不透明な状況は続いていますが、在宅時間の増加で「快適な住環境」が重視される傾向があることや、リモートワークの普及によるライフスタイルの変化、住宅ローン減税制度の効果もあり、比較的底堅く推移していくと見込まれています。

やや中期的には、地方から大都市圏への人口流入、ライフステージ・ライフスタイルに合わせた住み替え、単身世帯の増加等を背景とした住宅需要の活性化が予想されます。また、国の中古物件流通促進政策を背景とした中古物件流通量の増加等、住宅ローン市場において引き続き成長が見込める領域(潜在マーケット)が存在すると想定されます。

競合他社の状況と
商品ラインナップ

日本銀行によるマイナス金利政策や変動金利型住宅ローン金利引き下げ競争の激化を背景として、住宅ローンによる利息収益が期待しにくい環境が続き、銀行をはじめとする民間金融機関の住宅ローン事業の縮小・撤退が報じられておりますが、変動金利商品を提供する大小の銀行は、依然として全住宅ローンの80%を超える市場を占有しており、特にインターネット専業銀行は住宅ローンの商品性・サービスの強化を推し進め、銀行のなかではポジションを拡大しつつある状況にあります。

当社グループは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している全期間固定金利商品で、従来から提供する「ARUHI フラット35」(【フラット35(買取型)】)に加え、当社独自の全期間固定金利商品である「ARUHI スーパーフラット」(【フラット35(保証型)】)を数年前から市場に投入・拡大することにより、全期間固定金利市場の拡大を図っております。「ARUHI スーパーフラット」シリーズは全体の実行件数を押し上げる原動力となっており、2023年3月期の【フラット35】の実行件数(借り換えを含む)シェアは25.2%となり、13年連続で第1位となりました。さらに、銀行代理商品やオリジナル変動金利商品等の変動金利商品の導入・拡充により、市場規模の大きなセグメントに参入し、住宅ローン事業のさらなる拡大を図っております。今後は、お客さまの属性やニーズの違いを的確に分析・判断し、最適な商品を開発することに加え、新たな顧客層や不動産事業者等への営業基盤強化等が課題であると認識しております。

販売チャネルおよび営業体制

ARUHIは、FC店舗、直営店舗、直販ホールセール営業や来店不要で手続きが可能な非対面チャネルなど、さまざまな販売チャネルを拡大して提供することで、より大きな市場により効率よくアクセス可能な体制を整備してきました。また、店舗網の強化に取り組む上で、FC店舗を含む人材の安定的な確保、能力向上とコンプライアンス体制の強化が課題であると認識しています。
2021年4月1日付で営業体制を再編し、従来のFC店舗の支援・管理機能と直営店舗の営業機能を一本化しました。より高度かつ機動的な営業戦略の策定・遂行を図るとともに地域戦略の強化を目指します。加えて、今回の再編により店舗チャネルの戦略的な運営を従来以上に推し進め、販売体制とコンプライアンス体制の強化に継続的に取り組みます。
今後も、全国に展開されるリアルチャネルと非対面チャネルをさらに強化することで、多様化するお客さまのニーズに対応してまいります。

オペレーション体制

ARUHIは、住宅ローン業務において、OCR(Optical Character Recognition)やRPA(Robotic Process Automation)、AI等の最先端テクノロジーを活かして、お客さまの利便性と事務効率の向上への取組みを加速。また、2019年12月に導入した、AIを活用した住宅ローン(※)の不正利用検知システム「ARUHI ホークアイ 1.0」に、不適切な物件価格を検知する機能を追加した「ARUHI ホークアイ 2.0」を2021年3月よりテスト運用し、2021年5月に本格稼働を開始しました。今後も引き続きARUHI独自の先進的なテクノロジーを活用し、住宅ローン業務の自動化・ペーパーレス化等を通じたさらなる事務処理能力、精度の向上及び事務コストの削減に取り組みます。オペレーション体制の強化においては、イノベーション・チャレンジを継続することが当社の責務かつ課題であると認識しております。

また、当社は、こうした住宅ローンにおけるオペレーションの強みを活かし、事務コストを削減したい、煩雑な事務作業を外注したい、といった銀行等民間金融機関からのご要望にお応えする事務受託子会社を設立し事務受託業務を行っております。従来コストセンターであった住宅ローン事務を、テクノロジーを活用した独自の強みによりプロフィットセンター化を実現することで、収益化への貢献を目指しています。

  • 「ARUHI ホークアイ」検知対象商品:ARUHI 変動S、銀行代理商品、媒介商品を除いたARUHIが取り扱う住宅ローン商品(2021年5月現在)

会社が考えるサステナビリティ

サステナビリティの方向性

ARUHIは、住み替えにより新しい家を買いたい、人生を変えたいと思ったお客さまにワンストップでさまざまな商品・サービスを提供することで、既存住宅ストックと地域活性を促し、誰もが自分らしい生活ができる持続可能な社会の実現を目指しています。また、お客さま・ビジネスパートナー・地域社会などのみなさまの期待・要請に応え、高い倫理観のもとに住まいと暮らしをサポートするさまざまな事業を開発・推進することで、社会的課題の解決と持続的な企業価値の向上を図ります。

カスタマーファースト

ARUHIは、お客さまの満足度向上は最も重要な経営課題の一つであると考えています。当社の考える「お客さま」とは、住宅ローンにおけるお客さまだけでなく、ビジネスパートナー、地域社会、従業員等を含むさまざまな方であると定義しております。全社をあげて顧客満足度の向上への取組みを行うため、社内のすべての会議体・すべての部署に対してお客さま満足に関する提言を行うCSD(Customer Satisfaction Director)を設置し、「カスタマーファースト」をスローガンとして、全社的な取組みを行っています。

サステナブルなライフスタイルの提案

地域活性への取組みとして、「本当に住みやすい街大賞」の選定を行っています。ARUHIは住宅ローン事業で得られた膨大なデータを元に、あこがれやイメージではなく「実際にその地域で生活する」という視点から、住環境・交通利便・教育環境・コストパフォーマンス・発展性の5つの基準について、住宅や不動産の専門家が参画する選定委員会によって、公平な審査のもとに毎年「本当に住みやすい街」を選定しランキングを発表しています。主要な地域別に公表しているこのランキングはTV、雑誌、インターネットなどの多くのメディアに取り上げられ話題となっており、選出された街の商店街の看板やWebサイトなどにランキングを利用していただくことで、街のPRを後押ししています。また、選定された街と連携し地域活性に向けた取組みを行うことで、街の持続的な発展に貢献しています。

環境

「良いものを受け継ぎ長く使う、ストック型・循環型社会の形成に貢献する」「地球環境に配慮した、良質な住宅の普及を促進する」との考え方をベースに企業活動を行っています。
また、当該考え方に基づいたグリーンRMBSを発行しており、その裏付け資産は、省エネルギー性能の高い住宅に対するローンである【フラット35】Sのうち適格基準を満たすものを選定しており、省エネルギー性に優れた住宅の普及促進に貢献しています。こうしたグリーンRMBSの発行は、日本初(※)の取組みとなるもので、2021年4月には「ディール・オブ・ザ・イヤー2020」で「ベスト・ストラクチャード・プロダクト」を受賞いたしました。今後も金融機関として環境負荷を減らす取組みに努めてまいります。

「働きやすさ」と「働きがい」の両立

従業員ひとりひとりがそれぞれのワークスタイル・ライフスタイルに合わせてその能力を最大限発揮できる多様性のある職場環境を目指し、その一環としてリモートワーク体制の積極推進やコアタイムがないスーパーフレックス制度を導入しています。また、最長3年の育児休業や小学校6年生までの育児時短勤務などに加え、産休・育休中は先輩従業員に復職後のアドバイスを受ける「ワーキングペアレントコミュニティ」を開催するなど出産や育児が必要な従業員をサポートしています。また、教育研修については、人材開発に関する専門部署を設けており、階層別研修や外部研修への参加を推奨するなど従業員のスキル向上やキャリア形成をサポートする体制を整えることにより、従業員全員がその能力を最大限に発揮できる環境づくりと人材育成に取り組んでいます。

内部管理体制及び経営管理体制

1ガバナンス

ARUHIは、コーポレートガバナンス・コードを重視した経営を行うため、以下の基本的考え方に基づくコーポレート・ガバナンスを行っております。当社は、これからも透明性が高く健全な企業経営を継続的に行ってまいります。

2リスク管理

リスク管理基本方針に基づくERM(Enterprise Risk Management)体制により、グループ全体のリスクを統合的に管理しています。事業領域の拡大や商品拡充に伴う新規リスクや既存リスクの継続的なモニタリングにより、リスクを適切にコントロールしながらビジネスの拡大と成長による企業価値向上に取り組んでまいります。

3コンプライアンス

ARUHIは、当社の「Mission、Value」の企業理念を具現化した「アルヒ・コンプライアンス行動規範」を定め、FC店舗従業員を含む全役職員に周知しています。この行動規範では、社外のステークホルダーのみなさま(お客さま・株主・社会全般など)への行動規範と帰属する組織の一員(よりよい企業風土・組織の一員・経営者など)としての行動規範を定めています。

当社は、こうした行動規範を日常業務で継続的に想起し行動につなげるため、「コンプライアンスファースト」をスローガンに掲げるとともに、「コンプライアンス・ハンドブック」を作成し、FC店舗従業員を含む全役職員に配布しています。また、テクノロジーの活用やオペレーションの改善を通じ、ルールに沿った適切な業務運営を行えるよう体制を整えています。FC店舗を含めたこれらの取組みは継続して強化していくことが重要と認識しており、FC店舗を含む全役職員に対する定期的な教育・研修及び月1回行う自主点検に加えて、定期検査を通じた管理体制を維持することでコンプライアンス風土の醸成に引き続き努めてまいります。

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